城下町に刻み込まれた無名の人々の思い

ならば、城下町キライなのかといえば、違うんです。城下町は好きなんです。私は居心地がいいですね。ただ、私の偏見かもしれないけれども、城下町の特徴がこれに近いとすれば、いま日本でさかんにやっている、「おもてなし」だとか、それに付随する「目くばり・心くばり」、こういったものを期待して、たとえば萩城三の丸・北門屋敷に旅行客としてチェックインしてしまうと、期待はずれもはなはだしいのではないかと。老婆心ですが、ふとそう思ったりします。城下町ってそういうところじゃないですから。昔の有力武士などが城を構えて周辺を整備したのですよ。そこに集まった人々は、どんなめにあい、どのような思いをその土地に刻み込んだのか。歴史に名を残さなかった人々が、ほとんどです。彼ら無名の声がこだまのように、綿々と血縁をつないできたわけです。
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